「第4部 レーダーと肉眼との対決」 より
                  第2水雷戦隊 第31駆逐隊 駆逐艦高波


赤、青、黄などの色がついた水柱が、敵の吊光弾でやみから浮き出した高波のまわりに、林のように立ってい た。

 ・・・ 壮烈!水雷戦隊 121頁




思わぬアクシデントに見舞われた時、突然トラブルに出くわした時 ・・・ 。 その人の本質が試され、人格が明らかにされ、パフォーマンスが厳しく問われるのはまさにそのような時であります。

私なんか秋葉原あたりで突然外人さんに道を尋ねられただけでびっくり仰天、オタオタしてしまってまともに説明もできなくなる呆れた小心者なのですが、第2水雷戦隊の艦と人は、圧倒的な戦力で待ち構えていた敵に最悪の体勢で遭遇しても私のように取り乱すどころか、その磨きぬかれた能力と研ぎ澄まされた技量を瞬時に極限まで発揮し危機を脱し、勝利を収めたのです。

「壮烈!水雷戦隊」の第4部ではこの「ルンガ沖夜戦」が駆逐艦高波と駆逐艦長波を中心に迫真の描写で描かれています。
緊張感に満ちた「静」から急転直下「動」へ、そして再び「静」へ ・・・ 実に読み応えのある一編ですが、自分としてはドラム缶輸送に臨む駆逐艦乗りについて記した次の一文に学ぶべきところ大なのです。


決まるまでは、文句をいっても、いったん決まると、前の文句は忘れて、全力をあげるのが、駆逐艦乗りという ものだった。

 ・・・ 壮烈!水雷戦隊 104頁



前の文句をいつまでも引きずって後の仕事に響かせがちな私は、これ、見習わなくてはなりません ・・・ 。





さて、ルンガ沖の駆逐艦高波をピットロードの1/700「夕雲」で再現してみました。

このキットはピットロードらしいパリッとしたモールドが好印象なのですが、艦橋背面や艦尾形状には手を加えた方がいいようですね。
しかし、買ってきたキットを積んでおくだけならまだしも、途中まで組み立てて結局投げ出してしまってばかりの「キット解体工廠(キッ ト・ブレーキングヤード)」な私には、いらん事せんと、とにかく完成させることが大事なので、これら要改修点には手を付けていません (-o-)

艦首尾の旗竿を真鍮線で作り、0.3mmのプラ棒で舷外電路を追加、大きすぎる上に浅い舷窓を0.5mmのドリルで彫り直し ・・・ と、追加工 作はこの程度です。

船体は、製作中に破損してしまったので、組み立て途中で放置プレイの憂き目に遭っていたピット1/700「陽炎」のものを流用しました。
ピットの「陽炎」と「夕雲」の船体は共通パーツだとばかり思い込んでいての所業だったのですが、完成後になって1番砲塔の取り付け位 置が「夕雲」の方が1.5mm程艦橋寄りになっていることを知り愕然、半ベソをかきながらの改修作業を余儀なくされたのも今となっては何も かもみな懐かしい思い出です(遠い目)。





塗装は基本的にラッカー系塗料を使用した筆塗りです。

船体はMrカラーの32番「軍艦色(2)」、甲板はSC06番「リノリウム色」、砲身の防水布や煙突の駆逐隊識別線等白色部分は311番「グレーFS36622」、44番「タン」のカッター内側に、煙突頂部は33番「つや消しブラック」、探照燈のレンズ部は8番「シルバー」、リールのホーサーはピットロードシップスカラーの「甲板色」を使いました。

焼鉄色はギラってて嫌なので機銃にはガイアカラーの「ドゥンケルグラウ」。

喫水線は艦底色が好かんので、Mrカラー327番「レッドFS11136」を烏口で入れています。
結果、烏口を使いこなすにはもっと練習が必要だという教訓を得ました ・・・ 。

最後にハンブロールの33番「マットブラック」で墨入れをした後、同じくマットブラックで色を付けたホルベインのペトロールをウォッシング風に全体にムラっぽく塗って味付けをしました。
結果、生のマットブラックでのウォッシングは汚くなってしまうのでやめといた方がいいという教訓を得ました ・・・ 。

灰色に塗られた駆逐艦にキリリと粋なアクセント。
あるとなしとじゃ大違い、だけどイマイチよく解からん駆逐隊識別線ですが、ルンガ沖夜戦時の第31駆逐隊は2水戦の2番隊、高波はその31駆の司令駆逐艦だったので、同じ31駆の「巻波」「長波」の写真を参考にした幾分太めの白線を「前1・後2」で書き込みました。





勇敢な「高波」は、このルンガ沖で米重巡隊の圧倒的な火力を一身に引き受け最期を遂げました。
僅か3ヶ月の生涯でした。

幕末長州藩の大村益次郎の生涯を描き、大河ドラマの原作ともなった司馬遼太郎氏の著作に例えるなら「高波」はまさに「花神」でした。
「高波」は、ルンガ沖に待ち構えるレーダーに姿を暴露し8インチ砲の猛火に潰えんとする第2水雷戦隊を救うため忽然として現れ、日本の駆逐艦と駆逐艦乗りの真価を知らしめるや、大急ぎで去っていったのです。

しかし、戦史に名を残す活躍をすることができたとはいえ、やはり船として3ヶ月はあまりに短すぎる生涯でした。


星弾のもとにスポット・ライトを浴び、猛打の山なす積み重ねのはてに彼女は息をひきとろうとしているのだった。

 ・・・ 半藤一利著 「魚雷戦 第二水雷戦隊」 160頁



私はこの悲しく痛ましい一文を読んで、涙がはらはらとこぼれ落ちました 。



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この半藤一利氏の「魚雷戦 第二水雷戦隊(R出版・昭和46年9月30日初版発行、ちなみに同年12月で10版発行!)」は、「戦記」というより「文学」、ルンガ沖の戦いのみならず日本の駆逐艦と人そのものをよんだ「詩」とも評すべき素晴らしい作品です。
もちろん現在では入手困難ですが、名作は不滅、名書は不朽、PHP研究所より「ルンガ沖夜戦」として復刊されていますので、駆逐艦好きにまさかそんな人はいないと思いますが、未読の方、おられましたら是非々々お読み下さい。



                                                    平成20年1月21日 掲載

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