「第2部 駆逐艦乗り奮戦す」 より
第10戦隊 第17駆逐隊 駆逐艦谷風

58機は、タマをおとしてしまったあと、まだ谷風が、思うぞんぶんに走りまわっているのを見て、自分の目が信じられないほど、おどろいた。

 ・・・ 壮烈!水雷戦隊 58頁




やっと仕事が片付いて、さあ、あがろうかな ・・・ てな時に急な仕事を持ち込まれるというのは実につらく、正直嫌になっちゃうものです。
そんな時、私は駆逐艦谷風とその乗員たちのことを心に思い浮かべます。

ミッドウェー海戦における空母全滅・艦隊総退却のさなか、単艦戦場に引き返し「飛龍」乗員を救助するよう命ぜられた彼らの命がけの残業に比べれば、自分の残業なんて大した事ないじゃないか ・・・ と思えて、さあ頑張って仕事にとりかかるぞ!という活力が湧いてくるのです(ような気がします)。


勝見艦長は (中略) しりごみすることなど、思いもよらなかった。 「 いくぞっ。」と叫ぶと、乗員たちが 答えた。
「 やりましょうっ。」

 ・・・ 壮烈!水雷戦隊 54頁



厳しい仕事を前にするとファイトが湧いてくるどころか逆にテンション下がって胃が痛くなる私は、これ、見習わなくてはなりません ・・・ 。





というわけで、「第2部 駆逐艦乗り奮戦す」で活躍する駆逐艦谷風をアオシマの1/700「駆逐艦浜風」を用いて再現してみました。
優美なラインの艦首まわりとナイスな形状の艦橋が嬉しいキットです。

ただ、ラッフィング型ボート・ダビッドや後部マスト、それに艦首甲板パーツの取り付けにはちょっと手こずりましたが ・・・。
小物パーツはピットロードの方がいい感じなので、ラジアル型ボート・ダビッド、探照燈、方位測定儀アンテナはそちらを使用しました。

艦首尾の旗竿は真鍮線、舷外電路は0.3mmのプラ棒、舷窓の追加は0.5mmのドリルです。
さらに艦尾にはプラペーパーの爆雷投下台と伸ばしランナーの爆雷を追加しました。

改修点はこれだけですので、今のご時勢では殆ど素組みレベルの作品と言えますね。
エッチングパーツだらけの作品と違い、シンプルでスッキリしてて実に良い出来ではないか ・・・ と、自分で自分に一生懸命言い聞かせています。





塗装は喫水線を烏口で入れた以外は全て筆塗りです。

「呉色」だの「舞鶴色」だのといったこだわりはないので、単品売りされていて入手しやすいMrカラーの「軍艦色(2)」にフラットベースを加えたものをこだわり無く塗っています。

「谷風」は空母直衛の第10戦隊第17駆逐隊所属としてミッドウェー海戦に参加していますが、17駆が第10戦隊の何番隊なのか不明だったので、番号順に2番隊でいいかしらんと安易に決め付け、「前2・後中1」の識別線を「グレーFS36622」で書き込んでみました。

なお、識別線については世界の艦船95年9月号、中川務氏による「日本駆逐艦煙突識別線の変遷」が大変貴重な資料として参考になります。

1番砲塔及び2番砲塔には日の丸がついていたのかも知れませんが、今回は省略しました。



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平成20年4月14日追記

先日「第10戦隊戦時日誌」を見たところ、ミッドウェー海戦時の艦隊区分は以下のとおりとなっておりました・・・。

旗艦 長良

連隊番号1 隊番号1 第10駆逐隊 風雲 夕雲 巻雲 秋雲

連隊番号1 隊番号3 第17駆逐隊 谷風 浦風 浜風 磯風

連隊番号2 隊番号2 第7駆逐隊  潮 漣 曙

よって、煙突に白線を塗るなら「前3・後中1」であって、私の作例は大間違いである事が判明したわけであります(号泣)。

そもそも、17駆を「番号順なら10戦隊の2番目」としてしまった時点で支離滅裂なわけで(さらに号泣)。

電路のパターンもどうやら間違えているようなので(艦首から来て一段落ちる部分。もっと後ろ寄りにすべきでした。)、改めて再製作、 雪辱を期する所存です。
皆様は、私のような開いた口が塞がらないミスをされませぬようご注意下さい・・・。


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「壮烈!水雷戦隊」には、みんな夢中になってしまって敵機の数を「艦上爆撃機第1波26機、第2波6機、爆撃機4機」と数えるのが精一杯で第1航空艦隊戦闘詳報にはその機数しか書かれていないが、実際は58機の空母機と12機のB17による攻撃だったとし、137発もの爆弾が雨のように降り注いだと書かれています。

「米軍機は技量不足だから、今の沈没判定は取り消し!」という凄い裏ワザを持つ帝国海軍の図上演習でさえ沈没間違いなしと判定せざるを得ないであろうこの危機的状況を、4機返り討ちで見事切り抜けることができたポイントは一体何だったのでしょうか。

「ねたましいほどの巧妙さ」とアメリカ側が舌を巻く勝見艦長の高い技量、「世界の艦船 増刊第42集」に「戦争中期以降の日本海軍の術力低下とは比べものにならない」と評される乗組員の高い技量、そして「壮烈!水雷戦隊」に書かれている「空中衝突を起こすのがこわいのか、たてつづけにはとびかかってきても、四方から同時には来なかったので、助かった」という幸運 ・・・ 。

そう、「技量」と「幸運」を兼ね備えていたからこそ、「谷風」は「ひとり、ミッドウェーに勝つ」ことができたのでしょう。
逆に言うと、これらを欠いていると物事はなかなか上手くいかないということにもなるわけでして ・・・ まっすぐ舷窓を彫ったつもりがヒン曲がってる、パテを削るつもりがモールドばかり削れた、パーツの上に接着剤こぼした、きれいに塗れたときに限って乾燥中にでっかいホコリが飛んできてペッタリ張り付いた ・・・ 等々、低技量と不幸の積み重ねにあえぐ私が一向に模型を完成させることができないのも、いたし方ないことなのかも知れません(ToT)

未完成品の山に頭を抱える私は、「谷風」孤軍奮闘の姿の向こうに、己のモデリングライフが不毛の極みである理由を見い出すのでありま した。



                                                    平成20年1月21日 掲載

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